AI2026-04-11📖 5分

Vertex AIとは?Geminiとの違い・主要機能・料金体系をエンジニア視点で解説

Google CloudのVertex AIとは何かを初心者向けに解説。Gemini Developer APIとの違い、Model Garden・Vertex AI Studio・Agent Builderの主要機能、料金体系、Google AI Studioとの使い分けまで、実務で判断に迷うポイントを整理しました。

髙木 晃宏

代表 / エンジニア

👨‍💼

「Vertex AIとGemini API、どちらを使えばいいのか」——Google CloudでAI開発を始めようとしたエンジニアの多くが、最初にぶつかる疑問ではないでしょうか。

Vertex AIはGoogle Cloudが提供するAI開発のフルマネージドプラットフォームです。しかし、Google AI Studio、Gemini Developer API、Vertex AI Studioなど、似た名前のサービスが複数存在し、それぞれの関係を理解するのは容易ではありません。

本記事では、Vertex AIの全体像を整理し、Geminiとの関係、主要機能、料金体系、そして「どんな場合にVertex AIを選ぶべきか」の判断基準まで解説します。

Vertex AIとは

Vertex AI(バーテックスAI)は、Google Cloud上で提供される、AI開発のためのフルマネージドプラットフォームです。機械学習モデルの構築、トレーニング、チューニング、デプロイ、運用監視まで、AIプロジェクトのライフサイクル全体をカバーします。

ポイントは「プラットフォーム」であるということ。Vertex AI自体がAIモデルなのではなく、Geminiをはじめとする200以上のAIモデルを選択・カスタマイズ・運用するための基盤です。

たとえるなら、Geminiが「エンジン」、Vertex AIが「車体・コックピット・整備工場」をまとめた統合環境です。

Vertex AIとGeminiの違い

最も混乱しやすいポイントなので、最初に整理します。

Vertex AIGemini
種別AI開発プラットフォーム大規模言語モデル(LLM)
提供元Google CloudGoogle DeepMind
役割モデルの選択・チューニング・デプロイ・運用テキスト・画像・音声・動画の理解と生成
関係性Geminiを動かす基盤Vertex AI上で動作するモデルの一つ
課金Google Cloud課金(プロジェクト単位)トークン単位の従量課金

つまり、GeminiはVertex AI上で利用できるモデルの一つであり、Vertex AIはGeminiを本番環境で安全に運用するためのプラットフォームです。

Gemini Developer APIとVertex AI Gemini APIの使い分け

2026年現在、GeminiのAPIは2つのルートで利用できます。ここが最も混乱を生んでいるポイントです。

Gemini Developer APIVertex AI Gemini API
入口Google AI StudioVertex AI Studio
認証方式APIキーGoogle Cloudサービスアカウント(IAM)
始めやすさ★★★(APIキー発行で即利用可)★★☆(GCPプロジェクト設定が必要)
セキュリティ基本的エンタープライズグレード(IAM、VPC SC)
監査・ガバナンスなしCloud Audit Logs対応
利用可能モデルGeminiシリーズGemini + Claude + Llama + 200以上
カスタマイズ限定的ファインチューニング、RLHF対応
本番運用機能なしエンドポイント管理、モニタリング、A/Bテスト
料金無料枠あり、従量課金Google Cloud課金($300無料クレジット)
想定ユーザー個人開発者、プロトタイプ企業、本番アプリケーション

判断基準はシンプルです:

  • 試す・学ぶ・プロトタイプ → Gemini Developer API(Google AI Studio)
  • 本番デプロイ・企業利用・複数モデル比較 → Vertex AI

Google自身も、Gemini Developer APIで開発を始め、アプリケーションが成熟したらVertex AIに移行する、という成長パスを公式ドキュメントで推奨しています。2026年現在、両APIは統一SDKであるgoogle-genaiライブラリから利用でき、移行コストは小さくなっています。

Vertex AIの主要機能

Model Garden

Vertex AIの「モデルストア」です。以下のモデルにアクセスできます。

  • Google製モデル: Gemini 3、Imagen(画像生成)、Veo(動画生成)、Chirp(音声認識)
  • サードパーティモデル: Anthropic Claude、Mistral
  • オープンソースモデル: Gemma、Llama 3.2

200以上のモデルから、プロジェクトの要件に合ったものを選択し、そのままVertex AI上でテスト・デプロイできます。複数モデルを並行評価して最適なものを選ぶ、という使い方が本来のModel Gardenの価値です。

Vertex AI Studio

Vertex AI Studioは、ブラウザ上でGeminiモデルを試すためのワークスペースです。コードを書かずにプロンプトの設計・テスト・チューニングができます。

主にできること:

  • テキスト、画像、動画を使ったプロンプトの設計と実行
  • モデルのファインチューニング設定
  • APIコードの自動生成(Python、Node.js、Go等)
  • プロンプトのバージョン管理

Google AI Studioと似ていますが、Vertex AI Studioはエンタープライズ向けのセキュリティ(IAM、VPC Service Controls)が組み込まれている点が異なります。

Agent Builder

Agent Builderは、企業向けのAIエージェントを構築・デプロイするためのプラットフォームです。Agent Development Kit(ADK)を使って、以下のようなエージェントを開発できます。

  • 社内データを参照して回答するRAGチャットボット
  • ワークフローを自動化するタスクエージェント
  • 顧客対応を行うカスタマーサービスエージェント

Vertex AI Search

企業が持つ独自のデータ(社内文書、製品カタログ、FAQ等)を基に、Google品質の検索エンジンを構築できる機能です。生成AIを活用し、単なるキーワードマッチではなく、自然言語での質問に対して要約した回答を返します。

AutoML

機械学習の専門知識がなくても、ノーコード・ローコードでカスタムモデルをトレーニングできる機能です。表形式データ、画像分類、テキスト分類などのモデルを、データをアップロードするだけで作成できます。

MLOps機能

本番環境でのAI運用に必要な機能群です。

  • Vertex AI Pipelines: MLワークフローの自動化
  • Model Registry: モデルのバージョン管理
  • Model Monitoring: 本番モデルのパフォーマンス監視
  • Feature Store: 特徴量の一元管理と再利用

Vertex AIの料金体系

Vertex AIの料金は複数の要素で構成されます。

Geminiモデルの利用料金(2026年4月時点の目安)

モデル入力出力
Gemini 3 Flash低コスト低コスト
Gemini 3 Pro中コスト中コスト

※最新の正確な料金はGoogle Cloudの公式料金ページを確認してください。

その他の課金要素

  • トレーニング: カスタムモデルのトレーニングに使用したコンピューティングリソース(GPU時間)
  • 予測(推論): デプロイしたモデルへのリクエスト数とコンピューティングリソース
  • ストレージ: モデルやデータの保存容量
  • Vertex AI Search: クエリ数に応じた従量課金

無料枠

Google Cloudの新規利用者には**$300分の無料クレジット**が付与されます。Vertex AIを含むGoogle Cloudの各サービスに使用でき、Gemini APIの試用にも適用されます。

Vertex AIを選ぶべきケース

Vertex AIが適している場合

  • 本番アプリケーションにAIを組み込む — エンドポイント管理、スケーリング、モニタリングが必要
  • 複数のAIモデルを比較・検証したい — Model Gardenで200以上のモデルにアクセス
  • 企業のセキュリティ・コンプライアンス要件がある — IAM、監査ログ、VPC Service Controlsが必須
  • Google Cloudの他サービス(BigQuery、Cloud Storage等)とデータ連携する — Vertex AIはBigQueryとネイティブ統合
  • カスタムモデルのトレーニングが必要 — AutoMLやカスタムトレーニングジョブ

Vertex AIが不要な場合

  • Gemini APIを試したいだけ — Google AI Studio + Gemini Developer APIで十分
  • チャットボットを作りたいだけ — Gemini APIを直接呼ぶ方がシンプル
  • 予算が限られている個人開発 — Vertex AIのエンタープライズ機能はオーバースペック

Google AI StudioとVertex AI Studioの違い

Google AI StudioVertex AI Studio
位置づけ開発者向けの無料ツールエンタープライズ向け開発環境
認証Googleアカウント + APIキーGoogle Cloud IAM
利用可能モデルGeminiのみGemini + 200以上のモデル
セキュリティ基本的エンタープライズグレード
ファインチューニング限定的フル対応
本番デプロイ非対応対応
料金無料枠ありGoogle Cloud課金

迷ったら、まずGoogle AI Studioで試し、本番環境が必要になったらVertex AI Studioに移行するのが最も効率的なアプローチです。

まとめ

Vertex AIは、Google CloudのフルマネージドAI開発プラットフォームです。

  • Vertex AIはプラットフォーム、Geminiはモデル — 車体とエンジンの関係
  • Gemini Developer API vs Vertex AI Gemini API — 試すならDeveloper API、本番ならVertex AI
  • 主要機能: Model Garden(200+モデル)、Vertex AI Studio、Agent Builder、AutoML
  • 料金: トークン単位の従量課金 + コンピューティングリソース。新規$300無料クレジット
  • 判断基準: 本番デプロイ・企業利用・マルチモデル比較が必要ならVertex AI

AIの活用が当たり前になりつつある今、「どのプラットフォームで開発するか」の選択は、プロジェクトの成功を左右する重要な判断です。まずはGoogle AI Studioで手を動かしてみて、本番環境が見えてきたらVertex AIへの移行を検討する——このステップが最も無理のない始め方ではないでしょうか。

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